科学と非科学   中屋敷均

科学と非科学の境界というのは非常に曖昧である。われわれが論理的に説明できる分野を科学的というならば、よく分からない部分はすべて非科学である。科学の外には未知の世界が広がっているのだ。そして、科学の進歩とはその未知の世界を少しずつ開拓し、新…

歴史を学ぶとは

人は常識を疑わない。当たり前と思うことは、よほどの偏屈以外はそのまま受け入れるし、その常識を元にして様々なことを判断する。しかし、われわれの常識とは、現代というほんの短い期間に通用することに気をつけなければならない。 ギリシアのスパルタを例…

ラ・ラ・ランド ネタバレ

Lalaland(ララランド)とは理想の世界、またはあちら側を表す言葉だ。この映画はそんな世界に行くことを求め続け、努力をし続けるミア(エマ・ストーン)とセブ(ライアン・ゴズリング)の二人の物語だ。 ミアはハリウッドの近くのカフェでアルバイトをしながら女…

新型コロナに想う

緊急事態宣言が延長されて今日で2日目であるが、3月初旬の唐突だった全国での一斉休校からはや2ヶ月が過ぎた。ここ一週間、ようやく落ち着いてきた感もあるが、テレビをつければ相変わらずコロナ。ネットを見ても、コロナ。雑誌を開いてもコロナ。コロナ…

プーと大人になった僕

子どもの心を無くしたクリストファーロビンがプーとの再会を機に大切なことを思い出すという予定調和気味の作品だ。話の展開はわかりやすいし、結末も想像の範囲だった。しかし、だからといってこの作品がダメだったかというとそうでもない。なぜなら大人に…

天使がくれた時間 ネタバレ

ウォール街で成功し、豪華な暮らしをしていたジャック(ニコラス・ケイジ)はある日、突然、違う人生をおくっていた!目覚めるとそこは今まで見たことがない部屋。横には13年前に別れた恋人ケイト(ティア・レオーニ)が眠り、二人の子供のパパになっていた。 「…

「メッセージ」 ネタバレ

「メッセージ」という映画を見た。巣ごもり中なので、何か面白い映画をやっていないかとネットで調べていたが、以前気になっていたこの映画をレンタルしてきた。ジョディフォスターが主演の「コンタクト」という映画があったが、かなりテイストとしてはにて…

アフターコロナ

東日本大震災のときに、我々の世界はもう前には戻れないと感じた。3.11後の世界は人々の考え方も生き方も前とは大きく変わったからだ。そして、こんなパラダイムシフトは、そうそう起こりはしないと考えていた。 しかし、世界は再び変わろうとしている、新型…

感染症による社会の変質を考える

ゆげのひろのぶさんによるコラムが素晴らしい。アフターコロナを考える上で貴重な考えだ。東大の世界史の問題だそうだが、やはり東大はこういった問題が作れるほど良い人材がいるんだなあとつくづく思う。 14世紀にパンデミックを起こし、黒死病と呼ばれた…

Time ネタばれ

科学技術の進歩によりすべての人間の成長が25歳で止まり、そこから先は左腕に埋め込まれた体内時計「ボディ・クロック」が示す余命時間だけ生きることができる近未来。貧困層には余命時間が23時間しかない一方で、富裕層は永遠にも近い時間を手にする格差社…

ぼくはイエローで、ホワイトでちょっとブルー

話題作を読んでみました。日本とアイルランドのハーフである少年を通して、イギリスの教育や社会を考えている、とても興味深い作品だ。少しだけケチをつけるとするならば、この少年がちょっと出来すぎているというか老成しているというところです。正直に言…

人魚の眠る家 ネタばれ

新型コロナウイルスのせいで、どこへも出かけられず、映画館への足が向かない日々である。見えないウイルスにおびえている今の状況は、中世ヨーロッパの黒死病に恐れている人や戦前の日本でハンセン病におびえている人々と大差はない。我々は結局大して進歩…

母なる証明 ネタばれ

今を時めくポンジュノ監督の過去の作品である。「やられた!」というのが率直な感想である。「パラサイト」同じだが、映画の途中でガラッとパラダイムシフトが起こるのが彼の作品の特徴なのだろうか?まあ、2作品しか見ていないのではっきりしたことは言えな…

プロフェッショナルの流儀~神田伯山そして川谷絵音

完全に某公共放送のパクりであるが、本家とは全く関係がない。ここ最近気づいた二つの事柄にぴったりの言葉を探しているうちに思いついた言葉がこれだった。 神田伯山は今や飛ぶ鳥を落とす勢いのある講談師である。私は一年くらい前から彼の存在を知り、チケ…

危機と人類

名著「銃・病原菌・鉄」の著者の作品ということで読み進めていたが、上巻と下巻でだいぶ私の中での評価が異なる。日本についての考察が気になるところだが、上巻ではさらっとではあるが、革新的なものごとを古来の伝統だとする「伝統の発明」という観点で、…

パラサイト~半地下の家族

韓国映画を初めてみたが、その完成度の高さに驚いた。カンヌ映画祭のパルムドールをとったこともわかる気がする。最近のパルムドールは資本主義社会の不可避な現象である格差社会に対するメッセージ性をとても重視している。「万引き家族」しかり、「ジョー…

AI時代の読む力

国語と英語のカリスマといわれる出口先生と木村先生の共著である。まあ、日頃から述べられている内容の焼き直しという感じである。特に目新しい話が書いてあるわけではない。編集者がなんとなくキャッチーなAIという言葉を入れてタイトルを作ったのがありあ…

椎名林檎

何を隠そう、私は椎名林檎ファンである。別に隠してもいないが、「歌舞伎町の女王」を聞いて涙し、「長く短い祭」で心躍らせ、「おとなの掟」を一度聴いて彼女の作品だと確信し、「目抜き通り」で彼女の底知れぬ才能に驚いた。まあ、いたってよくいる林檎フ…

現代のインパール作戦

文部科学省が炎上しています。英語の民間試験導入を事実上中止し、次に大学共通テストの国語と数学での記述式テストも雲行きが怪しくなってきました。50万人もの受験生の記述答案を公平に採点できるのか?採点員がアルバイトでいいのか?自己採点との乖離が…

言い訳~関東芸人はなぜM-1で勝てないのか

ナイツの塙さんが書いた「言い訳」が面白い。お笑いはバカでは出来ないと改めて思った。彼は現在の漫才をとてもロジカルに説得力を持って書いている。いくつか気になったところを書いておく ◎コントと漫才の違い マイク一本で勝負するのが漫才。小道具を使う…

身の丈発言から教育改革を考える

10月24日、BSフジの番組で、萩生田文科相は英語民間試験の利用で不公平感について問われたところ、次のように発言しました。 「それを言ったら『あいつ予備校通っていてずるいよな』というのと同じ」 「裕福な家庭の子が回数受けてウォーミングアップできる…

長寿祝い

先日、父親の長寿の祝いをした。孫を含めて8人でお祝いをしたが、いつまでも元気でいてもらいたいものだ。しかし、杖を使いながらころばないようにゆっくり歩いている姿を見ると、寄る年波には勝てないなとつくづく思う。 退職後は、ボーリングをしたり、俳句…

ジョーカー【ネタバレ】

こんなにも心が苦しくなる映画があるだろうか?本作は傑作である、しかし、決して心が豊かになったり、幸せな気分になったりする映画ではない。見終わったあと、暗くなった街を一人でずっと歩いていたくなるような映画だ。 この映画を一言で言うなら、世界の中…

ガタカ 

大学時代、あまりにも暇すぎてよく映画を見ていた。場末の映画館で3本立てなんてのもよく見に行き、見終わって外に出るとあたりは暗くなっていたということもよくあった。そして、レンタルビデオが隆盛期を迎えていたので、何本も借りてよく見たものだった。…

新聞各社に一言

三連休に日本列島をおそった台風19号は現時点で70名以上の死者を出す大きな被害をもたらしました。刻一刻と死者数が増えていくニュースを見て、台風の脅威を改めて感じました。幸いにして、自分の住んでいる地域では、屋根の瓦が飛んだくらいで済みましたが…

白い衝動 

「白い衝動」という小説を読んだ。殺人衝動に駆られた少年と、かつて同じような衝動を持っていたスクールカウンセラーという二人の前に、残忍な性犯罪者が出所してくるという話だが、少し冗長であった。しかし、多くの会話を通して、登場人物の人物象を浮き上…

朝日新聞インタビュー

またまた、朝日新聞ネタである。昨日の大浦信行さんインタビュー記事がおもしろかった。 大浦信行さんの映像作品「遠近を抱えて Part2」も、作中で「天皇の肖像を焼いた」と抗議の対象になっている。天皇と表現をめぐり30年以上も格闘してきた大浦さ…

脳は無理矢理こじつける

ヘんてこに見える形質を持った生き物について、どうしてそんなヘんてこな形質なのかと問われると、生きていくためには機能的にそういった形質が必要だからだろうと考えて答えを探しがちです、もちろん、「こんな形質を持っているから生きている」生物も数多…

Rain SEKAINOOWARI

Were all the year one constant sunshine, We should have no flowers. 17世紀英国の詩人、ヘンリー・ヴォーン 今日の朝日新聞 「折々のうた」より 朝日新聞の政治スタンスは基本的に好きではないが、文化面では大いに参考になる。まあ、知ったかぶりが多…

1ミリの後悔もない、はずがない。

後悔だらけの中年男にとっては、「1ミリの後悔もない、はずがない」という言葉さえ新鮮だった。1ミリどころか1メートルくらいの後悔を抱えて生きているので・・・。「あのとき、あんな事を言わなければ・・・」 「あそこで、頼んでいたら・・・」 「もっと、…