Time ネタばれ

映画 time に対する画像結果

 科学技術の進歩によりすべての人間の成長が25歳で止まり、そこから先は左腕に埋め込まれた体内時計「ボディ・クロック」が示す余命時間だけ生きることができる近未来。貧困層には余命時間が23時間しかない一方で、富裕層は永遠にも近い時間を手にする格差社会が生まれていた。ある日、ひとりの男から100年の時間を譲り受けた貧困層の青年ウィルは、その時間を使って富裕層が暮らす地域に潜入。大富豪の娘シルビアと出会い、時間監視局員(タイムキーパー)の追跡を受けながらも、時間に支配された世界の謎に迫っていく。

 

 アマゾンプライムビデオで評価が高かったので見てみた。とにかく設定が秀逸である。この設定だけでいろいろな物語が作れそうなくらいだ。そして、SFなのになぜか70年代当たりのアメリカを描いているような全体のトーンが「ガタカ」に似ているなあと思っていたら、「ガタカ」のアンドリュー・ニコルが監督でした。

 時は金なりとはよく言うが、その時間を貨幣にしていることで現代社会のあいまいな部分がはっきりとあぶりだされている気がする。貧しい人は生きるために働いている。その日の稼ぎを明日を迎えるために生きている様は、スラム街の人々が働いて一日分の時間を得ることと同じである。一方で富裕層は使い切れないほどの資産を持ってため込んでいる。アメリカの富豪たちが一生かかっても使い切れないほどの資産をもっていることは、何万年分もの時間をため込んでいる映画のお金持ちと同じである。そして、貧困層が働いて生み出した時間(お金)を富裕層が搾取して、ますます格差が広がっていく様子も現代社会を反映している。このあたりの設定は実に見事だ。

 また、映画の中でスラムゾーンと富裕ゾーンが完全に分かれていて、スラムゾーンから出るには何か所もある料金所で時間を払わなければならない。その額は貧困層にはとても払える時間ではないので、結果として見えざる壁によって格差が固定化している。貧困ゾーンでいくら相手の時間を奪ったところで、到底支払える額ではないのだ。

 貧困層はその日暮らしであり、富裕層は有り余る時間を持て余している。そんなときに主人公が100年分の時間をもらい、富裕ゾーンへ行くあたりから物語が始まる。

 ところが、ここからの話は全く面白くない。いくらでも話の展開があっただろうに、どうしてこの物語を採用したのか理解できない。まず、主人公が何をしたいのかよくわからない。この不条理な世界を変えていこうと思っているらしいが、やっていることは銀行強盗であり、奪った時間を貧困層に分け与えているだけだ。おまえはねずみ小僧か!と突っ込みをいれたくなる。また、大富豪の娘もほんの少しの火遊びが主人公ともども銀行強盗犯になっていく。

 いったいこの壮大なシステムを作った張本人は誰なの?大富豪が恐れている人は誰なの?主人公の父親の死んだ理由はどうなったの?こういった疑問が回収されないまま、二人は銀行強盗を繰り返していくらしい。

 また、二人が貧困層に時間を分け与えたことで、スラムゾーンでの秩序がみだれていく。大富豪がいっていたが、主人公のしていることは、彼らを不幸にしていくようにもみえる。そこには新たな不平等が生じ、強者生存の原理は変わりがないようにも思える。人間の幸せとは何かをこのあたりを膨らませることで語っていくこともできたような気がする。

 いろいろいったが、これほど私の想像力を刺激する設定はなかなかない。

"Time is money."  この意味をもう一度噛みしめてみたい。