AI時代の読む力

 国語と英語のカリスマといわれる出口先生と木村先生の共著である。まあ、日頃から述べられている内容の焼き直しという感じである。特に目新しい話が書いてあるわけではない。編集者がなんとなくキャッチーなAIという言葉を入れてタイトルを作ったのがありありであり、AIとはそれほど関係なく、いつの時代でも必要な読む力についての正論である。

 日本人は英語がしゃべれないといって、4技能を測る英語民間検定試験を導入しようとしていましたが、しゃべれることが言語習得の上で最上位にくると考えることがそもそも間違いなのだろう。考えて見ると日本人は全員、日本語を流暢に「しゃべっている」。しかし、だからといって、全員、国語ができるわけではない。つまり、「流暢に話が出来ること」=「言語をしっかり修得している」ということにはならないのだ。そこに必要なのは、論理性と中身(知識)である。

 彼ら二人の主張で共通していることは、読むことが全ての基本にあるというスタンスだ。読む力がベースになって、他の3技能に派生していくのだ。そう考えると、今の大学入学共通テストに関するドタバタもピントがずれているのかなあと感じてしまう。

 以下、本書で気になった部分を抜粋しておく。

 

 

外国語の能力は母国語を超えない。

 

外国語でも母国語でも4技能のうちで、リーディング(読む力)が一番大切であり、すべての基本となる。読む力がない人が自分で話せるわけが無いし、まして聞けるわけが無い。

書く力が読む力を超えることはない。書く力を伸ばすには読む力を鍛えること。

 

英語の学習では、読み書きをしっかりすること。そして、リスニングの強化。しゃべることはたどたどしくてもいい。

 

読書のあとに自分の言葉で内容を誰かに伝えると読む力がつく。なぜなら、頭の中で論理的に整理できていないと、人に論理的に説明できないからだ。つまり、「読める」とは論理的に整理して理解しているということである。「なんとなくわかった」では読めているとは言えない。

 

活字になった文章は手紙や日記などを除いて、基本的には不特定多数の他者に向けて書かれている。目の前に相手がいて、表情やジェスチャーを交えることができる会話とは決定的に違う。対立している人や同意していない人もいるはずなので、論理的でないと伝わらないし、主張を理解してもらいない。

反対に読者は筆者が論理的に書いた主張を読み取らなければならない。そのために国語という教科では、筆者の主張を答えるという問題が存在する。しかも、試験問題は普通に読むだけでは答えられないように、作品の中から一場面を切り取り、意図的に作成する。だから、主観を入れずに、根拠を文中から探し出して、登場人物の心情や作者の主張を客観的に分析しなければならない。物語文では主観を取り入れて、再解釈しないように注意する。

 

 論理の関係   ①抽象と具体   ②対立関係   ③因果関係