ラ・ラ・ランド ネタバレ

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 Lalaland(ララランド)とは理想の世界、またはあちら側を表す言葉だ。この映画はそんな世界に行くことを求め続け、努力をし続けるミア(エマ・ストーン)とセブ(ライアン・ゴズリング)の二人の物語だ。
 ミアはハリウッドの近くのカフェでアルバイトをしながら女優になることを夢見て、オーディションを繰り返す日々。そして、セブは自分の気持ちをジャズに乗せて観客に届けたいと思いながら、場末の酒場で好きでもない曲の弾き語りをしている。そんな二人が引かれ合うことは自然なことだった。そんな生き方を続ける二人だが、安定した生活に惹かれたり、全てを諦めそうになったりする。それでも夢と現実の狭間で揺れ動きながらもお互いに励まし合いながら生きていった。しかし、夢が現実になるにつれて、二人の生活はすれ違ってくる。ミアがオーディションに受かってパリに行くことになったときに、二人はお互いの夢に向かって歩み始める。再会を誓って。
 5年後、ミアは夢をつかんで有名な女優となって帰ってくる。そして、結婚して、子どもをもうけて、幸せな家庭をつかんでいた。一方、セブも自分の好きな曲を弾ける店を持ち、成功していた。しかし、店の名前は”SEB'S”。それは、二人で夢見ていた頃にミアが考えた店の名前だった。ミアは夫と何も知らずにその店に立ち寄り、セブとの再会を果たす。しかし、そこにはもう戻ることのない月日が流れていた。
 
 切ない話である。ジェンダー差別と言われるかもしれないが、女は明日を夢見る、そして、男は昨日を夢見ているものかもしれない。成功をつかんだミアの脳裏にはセブのことなんか全くなかったように思う。一方で、セブは常にミアとの日々が心に残っていたんだと思う。劇中で、二人が「カサブランカ」の話をするのが象徴的だった。あの映画でも、ハンフリーボガードは、彼女が戻ってくることを信じつつ、酒場でずっと待っていた。そして、長い年月が過ぎて再開したときに、ボガードは"As time goes by"を弾く。そう、この映画は「カサブランカ」へのオマージュなのだ。
 それにしても、曲が素晴らしい。劇中のすべての曲が美しく、切ない。私は今までミュージカルがどうしても苦手だった。物語の流れを無視して突然ダンスをしたり歌い出したりするからだ。しかし、この作品は実に上手にダンスや歌を入れている。ミアが女優を目指し、セブがジャズピアニストを目指しているので、話の流れを途切れさせず、絶妙なタイミングで始まる。素晴らしい。アカデミー賞を受賞したことも当然のことと思える。