プーと大人になった僕

 プーさんたちのセリフ一つ一つにハッとさせられる。大人向けな実写映画 ...

 子どもの心を無くしたクリストファーロビンがプーとの再会を機に大切なことを思い出すという予定調和気味の作品だ。話の展開はわかりやすいし、結末も想像の範囲だった。しかし、だからといってこの作品がダメだったかというとそうでもない。なぜなら大人になったクリストファーロビンは、大人になったすべての人の映し鏡だからだ。だからこそ、この映画を見たすべての大人は懐かしい過去のある日を思い出すだろう。

 10年前、子どもと一緒にプーさんをよく見ていた。プーと仲間達のちょっとした事件を、子どもと同じ気持ちで見ていたことを思い出す。一緒に見ていた子どもも大きくなってしまい、僕の心の中からも100エーカーの森はどこかへ行ってしまった。この映画を見ているとあの頃の気持ちまで蘇ってくる。そして、自分が随分遠くに来てしまったことに気づく、たぶんクリストファーロビンと同じように。
 プーは仲間がいなくなったので探しに行く。そして、クリストファーロビンと出会う。そして、今度は仲間達とクリストファーロビンがプーを探しに行く。今度は娘とプー達がクリストファーロビンを探しにロンドンへ大冒険する。みんな迷子になってそして仲間が探しに行く。これは人生の迷子になっても仲間が探してくれることのメタファーなのだろうか。
 「なんにもしないこと」が特権だった子ども時代が過ぎると誰もが、「何かをしなければ」と思い悩む。何かを得るためには何かをしなければならないと考えるからだ。しかし、本当にそうだろうか?明日のために今日を生きる?プーはロビンにこう言っていた
昨日は明日がくるなんて思わなかったけど、今日は今日なんだね。
なんにもしなくても日はまた昇る。今を生きることが大切なんじゃないか?そんなことを考えさせられた。
 100エーカーの森で見る夕日が美しい。何十年経っても変わらずにプーとその仲間達が遊んでいるだろう。僕もいってみたいな。100エーカーの森に。