ガタカ 

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 大学時代、あまりにも暇すぎてよく映画を見ていた。場末の映画館で3本立てなんてのもよく見に行き、見終わって外に出るとあたりは暗くなっていたということもよくあった。そして、レンタルビデオが隆盛期を迎えていたので、何本も借りてよく見たものだった。おかげで、名作と言われるものはたいてい見ていると言える。しかし、不幸なことに目が肥えてきたのか、それとも映画に対する期待値が高くなりすぎたのか最近ではよほど気持ちが動かない限り新作映画を見ることがなくなってしまった。

 さて、前置きが長くなってしまったが、アマゾンプライムで評価が高かった「ガタカ」を見た。1997年の作品であるが、そのタイトルすら知らなかった。結論から言うと名作である。「名作はたいてい見てきた」などという言葉が恥ずかしい。まだまだ、見ていない名作がたくさんあるのだと実感するとともに、そんな作品に出会う喜びを感じられて幸せだ。

 さてさて、前置きがものすごくなったが、「ガタカ」の話をしよう。あらすじは・・

遺伝子操作により管理された近未来。宇宙飛行士を夢見る青年ヴィンセントは、劣性の遺伝子のため希望の無い生活を送っていた。そんなある日、ヴィンセントは闇業者の手配により、事故により身障者となった優秀な遺伝子をもつ元エリート、ジェロームに成りすます偽装の契約を結ぶ。そうして、ジェロームの遺伝子を借りてエリートとなったヴィンセントは、宇宙飛行施設“ガタカ”に潜り込む。が、そんな中、彼の正体に疑いを持っていた上司の殺人事件が起こり……。(yahoo映画)

 人間のゲノム解析を始めた頃に作られた映画だが、遺伝子操作により、すぐれた遺伝子を持つ「適格者」と操作をせずに生まれて遺伝子に欠陥をもつ「不適格者」が共存する管理社会での物語である。現在では遺伝子工学が発達して現実に起こりえる事象であるので、まずその先見性に驚かされる。しかし、この話の主題は才能と努力との関係という人類永遠のテーマにある。したがって、土星へ有人ロケットを飛ばすようになった近未来にしては、すぐにばれそうな稚拙な成りすましや殺人事件を捜査する刑事のレトロ感などを批難することは的外れである。SFという舞台を借りているに過ぎないのだから。

 生まれながらに多くの才能を持っている人は確かにいる。しかし、その人がその才能を開花するとは限らない。才能は一種の種でしかない、その種が芽を出して大きな実をつけるには努力を含めた環境が必要である。一方で才能に恵まれなくても不断の努力によって大きなことを成し遂げる人もいる。「宇宙飛行士になりたい」という幼いときからの夢に向かってひたすら努力していたヴィンセントはまさにそういった人を具現したものだ。

 この映画は努力は裏切らないというメッセージを強く伝えている。もちろん、努力だけでなんとかなるなんて、いまさら思ってはいない。しかし、ひたむきに努力している人間には必ずそれを支えてくれる人がいることは信じていたい。ヴィンセントの努力を知るジェロームは「夢を見せてもらった」といって死んでいったし、思いを寄せていた同僚も不適格者と知りながらも、拒むことをしなかった。そして、なにより、ガタカでIDチェックをしていた係員は、彼の成りすましに気づいていたにもかかわらず、ずっと見逃していたことが、映画の最後で分かる。

 人は誰もが才能に憧れる。しかし、それは自らコントロールすることは出来ない。だから、努力する。そんな努力によって、夢のかけらをつかむことを信じずにはいられない。