母なる証明 ネタばれ

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 今を時めくポンジュノ監督の過去の作品である。「やられた!」というのが率直な感想である。「パラサイト」同じだが、映画の途中でガラッとパラダイムシフトが起こるのが彼の作品の特徴なのだろうか?まあ、2作品しか見ていないのではっきりしたことは言えないが。

 本作では、題名から想像していたように、母親の愛情により、えん罪で殺人犯に仕立て上げられた知的障害のある息子が救われるという感動作だと思った。映画の8割まではそのような流れの中で進んでいく。少し予定調和気味だなあというのがあったが、実はその中に様々な伏線が張り巡らされていた。

 バカといわれると、すごくキレて暴れてしまう。闇で針治療をしている母親はなぜが、悪いことを忘れることができるツボを心得ている。殺された少女は鼻血がでやすい体質である。

 母親の必死の捜査によって、むすこの無実が証明されたとおもったところに、目撃者が現れ、感動作で終わるのかと思った映画がガラッと趣が変わってしまった。バカと言われたことに怒ったむすこが投げ返した石が不幸にして少女の頭に当たってしまったということが分かったのだ。

 母親の苦労も水の泡となってしまったが、母親はその目撃者を殺してしまう。少女の血痕のついた服を着ていた男子生徒が現れ、犯人として逮捕されたという幸運も重なって息子は釈放される。

 母なる証明とは何だったのだろうか?罪を犯したとしても、どんなことがあっても子供を守っていくことなのだろうか?この映画では答えは出てこない。なぜなら、母親は悪いことを忘れるツボに自ら針を刺してすべてを忘れてしまったからだ。だが、本当にすべてを忘れたのだろうか?冒頭の草原で踊る母親の怪しげなほほえみや、純粋無垢そうなむすこに時折見える邪なまなざしなどをみると、すべてを覚えているような気もする。答えは観客にゆだねられているのだ。恐ろしい映画である。