書評

ポリコレの正体 福田ますみ

著者の福田ますみさんの名前は知らなかったが、福岡の「殺人教師」事件や「長野・丸子実業高校」の報道が、実際はモンスターペアレントの言い分をうのみにしたでっちあげだったことを調べ上げた記事を読んだことがあった。最近のマスメディアが事件の表層だ…

ザリガニの鳴くところ ネタバレ

ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進…

追憶のかけら

すごい作品である。今年読んだミステリーの中でもベスト3に間違いなく入る作品だ。事故で愛妻を喪い、失意の只中にあるうだつの上がらない大学講師の松嶋が、無名作家の未発表手記を入手する。その作家の自殺の真相を究明しようと調査を開始するが、そこには…

20世紀の歴史

とても興味深い本である。20世紀を俯瞰的に眺め「長い20世紀」として1880年代から2000年までの流れを描いている。 この長い20世紀を一言で言うなら帝国主義の隆盛と衰退であろう。そして、そのエポックメイキングな事件は第二次世界大戦ではなく、第一次世界…

阿蘭陀西鶴 ネタバレ

井原西鶴と盲目の娘おあいの物語である。初めは自分勝手な西鶴に振り回され、盲目なのに家事の一切をしているおあいが不憫で、「偉人の家族は必ずしも幸福では無いなあ」などと同情していた。しかし、「好色一代男」あたりから、父親の不器用な愛情が少しず…

歴史の教訓 失敗の本質と国家権力

工業化は、昆虫の変態のように社会全体を激変させる。工業化に焦れば焦るほど、伝統社会を強権的に破壊し、作り直したいという衝動が出る。人のものの考え方は急激には変わらないからである。後発の工業国ほど独裁権力人寄る人工的な社会変革を求める。その…

ぼくはイエローで、ホワイトでちょっとブルー

話題作を読んでみました。日本とアイルランドのハーフである少年を通して、イギリスの教育や社会を考えている、とても興味深い作品だ。少しだけケチをつけるとするならば、この少年がちょっと出来すぎているというか老成しているというところです。正直に言…

危機と人類

名著「銃・病原菌・鉄」の著者の作品ということで読み進めていたが、上巻と下巻でだいぶ私の中での評価が異なる。日本についての考察が気になるところだが、上巻ではさらっとではあるが、革新的なものごとを古来の伝統だとする「伝統の発明」という観点で、…

AI時代の読む力

国語と英語のカリスマといわれる出口先生と木村先生の共著である。まあ、日頃から述べられている内容の焼き直しという感じである。特に目新しい話が書いてあるわけではない。編集者がなんとなくキャッチーなAIという言葉を入れてタイトルを作ったのがありあ…

言い訳~関東芸人はなぜM-1で勝てないのか

ナイツの塙さんが書いた「言い訳」が面白い。お笑いはバカでは出来ないと改めて思った。彼は現在の漫才をとてもロジカルに説得力を持って書いている。いくつか気になったところを書いておく ◎コントと漫才の違い マイク一本で勝負するのが漫才。小道具を使う…

1ミリの後悔もない、はずがない。

後悔だらけの中年男にとっては、「1ミリの後悔もない、はずがない」という言葉さえ新鮮だった。1ミリどころか1メートルくらいの後悔を抱えて生きているので・・・。「あのとき、あんな事を言わなければ・・・」 「あそこで、頼んでいたら・・・」 「もっと、…

アーモンド

私は翻訳本をほとんど読まない。それは翻訳独特の日本語がどうしても気になって、頭に入ってこないからだ。最近はいくらかましになってきたが、昭和時代のいわゆる名訳と呼ばれる作品群(サリンジャー、ギャッツビー、トルストイ等)はあまりにも高尚すぎてお…