映画「新聞記者」

あらすじ
東都新聞の記者・吉岡(シム・ウンギョン)は、大学新設計画にまつわる極秘情報の匿名FAXを受け取り、調査を始める。日本人の父と韓国人の母を持ち、アメリカで育った吉岡はある思いから日本の新聞社に在職していた。かたや内閣情報調査室官僚の杉原(松坂桃李)は、国民に尽くすという信念と、現実の任務の間で葛藤する。(シネマトゥデイ)

 

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 東京新聞記者・望月衣塑子の著書を原案とした話題作ということで、東京まで行って見て来た。私の立ち位置はどちらかというと右よりであることを念頭に読んでもらいたい。

 映画を見終わってまず感じたのは、「日本はなんだかんだと言って、多様な考えを受容する社会であり、いろいろな考え方を持っている人がいるな」ということだ。映画のレビューを見ると「傑作だ!見た方が良い」という意見と「ひどい映画、ペンタゴンペーパーズの劣化版」という意見が真っ向対立している感じだ。同じ映画を見てもこれだけ感想が様々であることは日本社会が健全である証拠だと思う。さて、私はというと個人的には「駄作」の烙印を押したい。

 まず、映画として見るといくつか疑問点がある。映画の前半部分での新聞社内の映像が揺れている理由が分からない。手ぶれなのか演出なのか分からないが、見ていると悪酔いしそうである。また、主人公の新聞記者のキャスティングに韓国人をあえて起用した理由が分からない。日本人と韓国人のハーフであり、アメリカで生まれ育ったという設定だが、その設定自体が本当に必要だったのだろうか?たどたどしい日本語であることの言い訳にしか思えない。彼女が英語で話している場面では堂々としているが、日本語を話しているときにはおどおどした感じであり、演技に苦労しているなとハラハラしてみてしまった。

 内容の点から見ると、新聞記者である望月さんの原案と書いてあるが、彼女の著作を読んでいないのではっきりとしたことは言えないが、ジャーナリストとして、こういった陰謀説まがいの作品にクレジットされることを恥ずかしく思わなくてはいけないと思う。ジャーナリストはひたすら真実と向き合ってもらいたい。こういったフィクション(本当かも知れないが、現時点で真実であるという証拠はない)を小説家が書く分には別に目くじらを立てないが、ジャーナリストがそこに立ち入ってしまうと信用されなくなってしまうだろう。

 そもそも、ネットとテレビを見てばかりの新聞記者っているの?内閣情報室にツイッターにフェイクニュースを流しているだけの職員があんなにいるの?本当に官邸の闇を訴えたかったら、こんな印象操作のような映画を作るのではなくて、地道に取材をすべきではないだろうか?首相べったりの記者のレイプ事件が本当に隠蔽されたのなら、その確たる証拠をつかむべく取材するのがジャーナリストではないだろうか?

 前川喜平さんや寺脇研さんなどがクレジットされているこの映画を田原総一朗さんが持ち上げている。日本には健全な「表現の自由」があるなあとつくづく感じる。そして、受け手である我々がその表現に対してしっかりとした感受性を持つ必要性があると感じた。