旧友との再会

 10年ぶりに旧友と会った。高校時代に知り合ったのでかれこれ四半世紀以上の付き合いではあるが、それほど頻繁に会うと言うこともなかった。最近では年賀状のやりとりでお互いの近況を伝え合うくらいだったが、久しぶりに会おうと言うことになった。

 彼は高校時代からパワフルな男だった。「簡単な道と険しい道があったら、迷わず険しい道を選ぶ!」と当時から豪語していたが、彼の生き様は文字通り有言実行である。仕事も親から引き継いだ店があるにもかかわらず、移動販売を手がけている。金を稼ぐだけなら、引き継いだ店だけで悠々自適な生活が送れるであろうに、わざわざ過疎地域に行って商売をしている。それだけではなく、彼は地域の村おこしにも力を入れている。どうすれば、みんなが幸せになれるか。そこにやりがいと生きがいを見いだしているようだ。一方の私はどこだろうか?私は昔から簡単な道しか選ばない。自ら進んで努力しようなどという気もなく安穏と暮らしている。

 彼と自分との決定的な違いは、物事に対する取り組みに現れる。私はそれができない理由を探している。彼はどうすればそれができるかを考えている。(I'm always searching for the reason I cannot do it, while he is searching for the way he can do it.)

  この差はとてつもなく大きい。そして、退職してから、私のような人間は何も残らないが、彼にはずっとコミットしてきたコミュニティが残る。第二の人生を考える時期になって、彼の行動に触れたことは大きな衝撃だった。しかし、結局最後まで自分のことしか考えていない自分自身に気づくのだった。